
《Microclimate YASHIMA》(2023)
Audio, 7mins
Yashima field recordings, piano, violin, synthesizer
Violin: Asano Mekaru
本作品は屋島でのフィールドレコーディング(野外録音)を元に制作された。海と森をあわせ持つ屋島には豊かな音世界がある。千間堂跡ではたくさんの蝉の声の中にコトトトと音を立てるキツツキに出会った。屋島洞窟では奥深い闇からコウモリたちの営みを聴いた。古代から続く波の音、そして古代の人たちが屋嶋城の石垣を作る際に聞いたであろう石と石がぶつかる音。これからの音をやしま~るの中に配置(コンポジション)する。屋島の鉱物たちはこの島で繰り返され、そして移りゆく音をずっと聴いてきた証人である。
屋島で録音したものをずっと聴いているとその奥から何か別の音が聞こえてくるように気がした。その想像上の音を作曲の起点としている。
私が集めた音はこの豊かな島の音のほんのわずかにすぎない。場所や季節、天気や一日の時間帯によって音はどんどん変わっていく。この音楽を持って外に出て、陽の光、風、土や潮の匂い、そして石の感触とともに島を散策されることを願っています。
屋島山上交流拠点施設「やしまーる」内
期間: 常設







《音と旅する鉱物展 九州大学総合研究博物館コレクション》
2019年12月21日-2020年1月26日
三菱地所アルティアム(福岡)
Dec 21, 2019 - Jan 26, 2020
ARTIUM (Fukuoka)
Nondirectional Speaker, Parametric Speaker, Vibration Speaker, Sub-Woofer
Multi-Channel Audio
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海底奥深くで生成した石、宇宙から落下した隕石、十数億年前の石。本展では、九州大学総合研究博物館の鉱物コレクション約100点を、音楽家・原摩利彦が手がけた音とともに紹介する。
九州大学総合研究博物館は国内最大級となる750万点の貴重な博物標本・資料を収蔵。量・質ともに充実したコレクションは通常は一般公開されておらず、本展での一挙展示は貴重な機会となる。
本展のための音楽を制作した原は、現代美術や舞台、映像など幅広い分野で活動。自然や街のなかで音を集める「フィールドレコーディング」の手法を用い、博物館を訪れて収集した鉱物の音や、鉱物から連想した音をもとに作曲を行った。
会場に響くのは、五線譜に書き表せない不思議な音、どこか懐かしくも新しい揺らめく音。音楽に包まれながら、長い年月をかけて形成された鉱物を眺めることは、目には見えない遠い時代や場所への想像を掻き立て、新たな鑑賞体験をもたらすだろう。
鉱物の音を考えたとき、最初にじっと動かず何も音を発しない石、すなわち沈黙を思い浮かべた。しかし記憶を探ると、奈良県談山神社で観た能舞台での切り火をする火打石があった。またフランスのニースの石浜では、波に引かれ、ひしめき合うように無数の丸い石たちが鳴っていた。その他、石にまつわる音として、石琴のような楽器。少し拡大解釈を許せば、夜中にしくしくと泣くという「夜泣き石」の言い伝えや芭蕉の「閑さや岩にしみ入る蝉の声」も入れられるだろう。
鉱物は数百万年、十数億年をかけて変化してきた結果である。時には植物も地層の中に沈み、長い時間を経て化石になり、鉱物の仲間になる。我々が日頃感じている感覚をはるかに超える長大な時間の表現に、音楽あるいは音は有効だと主催者は考えたという。
鉱物を叩いて音を録音したり、隕石もあったのでNASA(アメリカ航空宇宙局)が公開している音を使ってみたり、どうすれば来場者が自由に想像力を膨らませながら鑑賞できるかを試行錯誤した。
京都新聞「現代のことば」2020年1月掲載「音の重なり」(原 摩利彦)より抜粋












